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竹林軒出張所

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『ビビビの貧乏時代』(本)

ビビビの貧乏時代 いつもお腹をすかせてた!
水木しげる著
ホーム社

『ビビビの貧乏時代』(本)_b0189364_8594563.jpg これも水木しげるのエッセイ・マンガ。タイトル通り、自身の貧しい時代を描いた短編マンガ集である。初出の年は巻末に記録されているが、初出誌については記載がない。そのためどういう出自かはわからない。あれやこれやの雑誌から、再録されていない未発表作品を適当にピックアップしたかのような印象である。
 どれも面白いが、他のエッセイ・マンガ、エッセイと内容がかなりかぶっている。中には『コミック昭和史』などに流用しているんじゃないかというものもある。流用してないにしても、かなり重なっているのは確か(その後、第6巻、第7巻で流用されていることを確認)。また、本書で取り上げられている短編マンガの間にもかぶっている部分が結構ある。編集に確固とした基準がないのかと思ってしまう。本書に掲載されているそれぞれの短編マンガの順序もバラバラ(な印象)で、せめて著者の年代順に並べるくらいしてほしかったと思う。通して読んでいると、話が前後して混乱する。
 収録作品の中には、フィクション(実際の水木プロをモデルにしたもの)も混ざっている他、元アシスタントの池上遼一を主人公にしたもの(『漫画狂の詩 =池上遼一伝=』)など、ユニークなものもあって、個々の作品としては水木作品らしく水準が高い。そういうこともあって、編集のいい加減さが余計目に付くのである。

追記1
 『漫画狂の詩 =池上遼一伝=』の初出雑誌がやけに気になっていたんで、ネットで調べた。『昭和50年の少年サンデー増刊号』ということである(あるホームページの情報、未確認)。初出雑誌をきちんと掲載していれば、こちらで調べたりする必要もないし、資料的な価値も出てくるんだがね。

追記2
 図書館で予約していた水木作品が今頃になって届いたので、いまだに水木作品を読み続けているが、ひととおり読んだので、おそらくこのあたりで打ち止めになると思う。『ゲゲゲの鬼太郎』や『河童の三平』までまとめて読んで、あらためて水準が高いことを認識した。一番のお奨めはやはり『コミック昭和史』である。水木しげるの集大成という印象を受ける。最初に読むのであれば、貧乏時代のエッセイ・マンガ(本作など)がよろしいかと思う。
★★★
by chikurinken | 2010-08-11 22:57 |
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