郷愁(1988年・ATG)
監督:中島丈博
脚本:中島丈博
出演:西川弘志、小牧彩里、吉行和子、津川雅彦、榎木孝明、中村銀次
昨日紹介した脚本家、中島丈博の第1回監督作品。
内容は自伝的なもので、『祭りの準備』に至るまでの中学生時代である。中島丈博の著書
『シナリオ無頼』によると、フィクションもかなり混ざっているが、大筋で自伝と言えるらしい。特に、田舎の土俗性が全編に渡って香っており、それに対する嫌悪感とも愛着ともとれる表現が随所にある。僕自身もこういった土俗性が嫌いで故郷を離れたこともあり、それについては大変共感できるところである。かなり私的な内容であるにもかかわらず、そこにある種の普遍性があるため、このような個人的な話でも一編の優れた映画として成立する。こういう映画が実現可能になったのも当時ATGという芸術志向の団体があったゆえかも知れない。商業ベース一辺倒だとなかなかこういう映画は作れないと思う。もっとも昨今の日本映画界もこの手の映画を結構産出しており、こういった傾向も、もしかしたらATGが残した遺産ではないかなどと考えたりする。
ともあれ、奇を衒ったところのない正攻法の映画で、四万十を映し出した映像も実に美しい。もちろん土俗的な人間臭さはあるが、そういうのが嫌でなければ楽しめるのではないかと思う(ホントのところ、僕はそういう映画は苦手なんだがね……でも最後まで面白く見れました)。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『シナリオ無頼(本)』竹林軒出張所『津軽じょんがら節(映画)』竹林軒出張所『極楽家族(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 海はこたえず(ドラマ)』