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竹林軒出張所

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『シナリオ無頼』(本)

シナリオ無頼 祭りは終わらない
中島丈博著
中公新書

『シナリオ無頼』(本)_b0189364_8385851.jpg シナリオライター、中島丈博による、自身と次作シナリオを語った書。一種の自伝と言えなくもない。
 著者、中島丈博はベテランのシナリオライターで、今となっては巨匠の部類に入る。特に『祭りの準備』(監督:黒木和雄)や『郷愁』(自身で監督)などの映画は自伝的なもので、シナリオライターの作家性を意識させる作品であった。またテレビでも『独身送別会』という自伝的作品を書いており、中島丈博自身の生涯は、これらの映画やドラマを見た人にとっては非常に関心があるところだ。要はどこまでフィクションでどこまでが創作かということである。特に、高知での鬱屈した青春時代を描いた『祭りの準備』は内容が赤裸々でもあり、これが「自伝的なシナリオ」と聞かされていたこともあって、見た当初からどこまでが実話なのかとか、作者はいったいどういった出自の人なのかといったレベルで非常に興味があった。本書では、そのあたりも書かれていて、著者の生涯がどのようにこういった作品に昇華されていったのかもよくわかるようになっている。そういう意味で、こういった作品の副読本として非常に価値のある著書である。
 しかし逆に、中島丈博のことをあまり知らない人にとっては、読む価値があるかどうかは微妙なところ。少し変わった出自のシナリオライターの生涯として読めば面白いかもしれないが、映画やシナリオに興味のない人にとっては厳しいかも知れない。ある種、読者を選ぶ類の本である。大河ドラマ(4作書いている)での役者とのもめ事や藤田敏八監督との諍いなども、こういったものに興味がある人であればなかなか面白いが、一般向けとは言えないような気もする。
 なお、副題の「祭りは終わらない」は、シナリオ作家デビュー(つまり「祭り」)前を描いた『祭りの準備』にちなんだものである(と思う)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『極楽家族(ドラマ)』
竹林軒出張所『津軽じょんがら節(映画)』
竹林軒出張所『郷愁(映画)』
竹林軒出張所『草燃える 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『藏 (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 海はこたえず(ドラマ)』

by chikurinken | 2010-07-29 08:39 |
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