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竹林軒出張所

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『前略おふくろ様』(1)〜(26)(ドラマ)

前略おふくろ様(1975年・日本テレビ)
監督:田中知己、吉野洋他
脚本:倉本聰、市川森一、金子成人他
出演:萩原健一、坂口良子、梅宮辰夫、丘みつ子、小松政夫、田中絹代、川谷拓三、室田日出男、北林谷栄、桃井かおり、桜井センリ

『前略おふくろ様』(1)〜(26)(ドラマ)_b0189364_17184866.jpg 『前略おふくろ様』と言えば名作ドラマの誉れ高い、倉本聰のドラマであるが、放送時は見ておらず、それ以降も見ていなかった。今回初放送から35年経っているが、初めて見ることになった。
 方々での評判に違わず、キャスティングも脚本も質が高く、非常に楽しむことができた。全編、萩原健一の母に対する手紙が、ナレーション代わりに使われ、進行を助ける。このあたりはその後の『北の国から』と同じ方法である。はにかんだ口調や、やや過剰な感情表出なども共通で、一方で少しナレーションが多すぎるきらいもある。
 ドラマ自体は、ホーム・ドラマの王道を行くような内容で、主人公と周辺人物の人間模様が描き出される。同時に時代背景なども随所に盛り込まれ、今見るとそのあたりが新鮮でもある。ストーリーは平凡だが、やはり人物の描き分けが非常にうまく、どの人物も実在するかのようで、このあたり昨今のドラマには見られない要素である。それぞれのキャラクターは、魅力的な人もいるが、総じて騒々しく、結構主人公の領域に土足で踏み込むようなところがあって、見ていて不快になる箇所もある。しかしそれもドラマの味であり、見ている方は、それぞれの人物に対して、知り合いに対するような親近感を持つことになる。逆にこのドラマに出た俳優は、おそらくその後、かなり長い間このイメージに縛られたのではないかとも危惧される。もっともこのドラマでは、主役クラスの登場人物に、従来と少し違う性格が割り当てられていたようにも思う。そういう意味では、それぞれの俳優にとって転換期になるような、それくらいのドラマだったと思う。このあたりは倉本聰の本領発揮の部分なんだろう。
 なお、2007年にフジテレビで放送された倉本聰のドラマ『拝啓、父上様』は、このドラマにものすごく似ていたんで、おそらく焼き直しのつもりでリメイクしたものなんだろう。ただし内容はどうしようもないものだった。僕はこちらを先に見てそのイメージがすでにあったんで、『前略おふくろ様』も似たようなものだろうと高をくくっていたんだが、オリジナルの方が断然良いと思った。やはりリメイクはリメイクなりのものでしかないということなのだ。もちろん全盛期のものとその後のものとを比べるというのも、酷と言えば酷なんだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『前略おふくろ様II(1)〜(24)(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『君は海を見たか (1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『北の国から (1)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『北の国から (13)〜(24)(ドラマ)』
竹林軒出張所『うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『昨日、悲別で (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
by chikurinken | 2010-06-11 17:21 | ドラマ
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