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竹林軒出張所

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『CO2と温暖化の正体』(本)

CO2と温暖化の正体
ウォレス・S・ブロッカー、ロバート・クンジグ著
内田昌男監訳、東郷えりか訳
河出書房新社

『CO2と温暖化の正体』(本)_b0189364_10313244.jpg 地球温暖化の構造の解明に当たった学者たちの物語。
 もちろん、学者たちの解明の物語だけではなく、海洋の流れなどが地球規模の気候に影響を及ぼすことや、その流れの変動と氷河期との関連、CO2濃度の増加で地球温暖化がどのように進行するかなどについても解説されている。で、後者がメインなのは言うまでもない。ただ、学者たちの物語が異常にダラダラ続き、本題と言える理論的な部分を阻害することになっている。しかも物語部分が面白いかというと必ずしもそうではなく、新しい名前が次から次に登場し、ややこしくなって読みづらくしている。科学ジャーナリストの著者、クンジグによる一種の自己満足ではないかと思ってしまう。おかげで読み終わるのに相当な労力がかかった。中身は、気候変動に関する示唆に富む理論が紹介されていて充実しているんだが、いかんせん読みづらく、そういうものをすべて相殺しているといっても過言ではない。
 本書は、CO2濃度の増加が温暖化をもたらしており、そのための対策が早急に必要という(一般的な)立場で記述されている。しかもCO2を固定化する技術もある程度確立されており、要はそれが経済的に実行可能になるかどうかというレベルであって、早い話が各国政府が本腰を入れるかどうかにかかっていると言う。そういう点で非常に楽観的ではあるが、その道の権威と言える学者(ブロッカー)の言であり、しかも理路整然と述べられているため、内容には非常に説得力がある。そういうこともあり、温暖化問題の周辺がある程度掴めるようになっている。非常に真摯な本であることには違いないんだが、それでも読みづらく、読んでいるときは苦行のようだった。あまり人にお勧めしたい本ではない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『グレタ ひとりぼっちの挑戦(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2010-02-01 10:32 |
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