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竹林軒出張所

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『坂の上の雲』のドラマ版を見た

『坂の上の雲』のドラマ版を見た_b0189364_9354215.jpg 司馬遼太郎の『坂の上の雲』がNHKのスペシャル・ドラマとして放送されている。なんでも今年の11月、12月に第1部、来年に第2部、再来年に第3部という具合に3年連続で放送するんだそうで、2、3年目は完全に忘れ去られてしまいそうな放送スケジュールである。奇を衒うにもほどがある。大河ドラマの枠で半年間集中的に放送した方が良いと思うが。
 『坂の上の雲』は、文春文庫で8巻構成で出版されており、浪人時代、サラリーマン時代の計2回読もうとしたが、どちらも5〜6巻でやめてしまった。とにかく、話の途中で脱線することが異常に多く、読んでいるうちに馬鹿馬鹿しくなる。そもそも、小説などというのは、語り部をどの位置に置くかというのが重要なのではないかと思う。こんなに簡単に頻繁に顔を出して、余計なことをベラベラしゃべりまくるなどというのはうるさくてしようがない。語り部は、極力さりげなくあってほしい。それが良い小説だと僕は思う。現在放送中のドラマでも、語りが多くてうるさい感じがする。司馬遼太郎がいつでも顔を出すという感じで、正直言ってウザイ!
 それはさておき、ドラマは一応録画しておいたがたぶん見ないだろうと思っていた。ところが昨日たまたまテレビをつけたらこれが放送されていて、そのまま終わりまで見入ってしまった。昨日の放送は第2回目だったんだが、結局その後、第1回目も続けて見てしまうことになった。意外に面白かったのである。NHKの大河ドラマに恒例のオーバーアクト+過剰な演出は随所に見られるものの、主演の3人(本木雅弘、香川照之、菅野美穂)が実力を発揮しており、なかなか侮れない。また、最近の大河ドラマではいつもセット(大道具)がチープで見ていて苦笑することが多いが、このドラマに関しては、ロケを含めて大道具が割合良くできている。コンピュータ合成を随所に使っているのではないかと思うが、それもまったく意識させられない。
 この話は、主人公が軍人の秋山兄弟と文人の正岡子規なんで、周辺を取り巻く登場人物が多岐に渡ってその点が非常に面白いのだが、ドラマではその辺りでもすでに本領を発揮している。高橋是清や夏目漱石がさりげなく登場してきて、原作の面白い部分も表現されている。ただ、原作もそうだが、脳天気な明るさというか現実肯定はいかにも司馬遼太郎風で、軽いと言えば軽い。だが、家族で見るテレビ・ドラマとしては最適と言えるかも知れない。ともかく力の入ったドラマのようなんで、読んでいない第6巻以降をこのドラマで是非確認したいと思う。と思ったものの、第6巻以降といえば再来年放送か……。2011年と言えばすでに地デジ化も終わっている。再来年の予定を今から検討するなどとても馬鹿馬鹿しいと思うぞ。何だってこんな放送スケジュールを組んだのか、その辺をNHKに訊いてみたいものだ。

参考:
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『墨汁一滴(本)』
竹林軒出張所『仰臥漫録(本)』
竹林軒出張所『飯待つ間(本)』

by chikurinken | 2009-12-07 09:37 | ドラマ
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