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竹林軒出張所

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『ニホンミツバチが日本の農業を救う』(本)

ニホンミツバチが日本の農業を救う
久志冨士男著
高文研

『ニホンミツバチが日本の農業を救う』(本)_b0189364_9465132.jpg この本も、タイトルは少しピント外れのような気がするが、タイトルに惹かれて読んだわけではないから特に気にならなかった。
 先日読んだ『ハチはなぜ大量死したのか』『銀座ミツバチ物語』でミツバチに関心を持ち、ミツバチの本を探していてたまたまこの本に行き当たった。先の本も、ミツバチの生態などについて細かく書かれていたが、どちらかというと聞いたまたは集めた情報に基づいていたような気がする。本書の内容は、著者のおそるべき観察眼に基づいており、その内容の深さに舌を巻く。ミツバチの気持ちまで推し量っており、著者はミツバチと会話できるとまで言い放っている。だからと言ってアヤシイ人という感じはなく、ただただミツバチに対する愛情が伝わってくるのである。いわば、ミツバチ・マニアによる「ミツバチ大全」とも言うべき本だ。
 著者は長崎県在住の元高校教師の作家だが、ミツバチに大変な愛着を抱き、やがて自らミツバチを飼うことになる(そのあたりのいきさつも書かれている)。先ほども言ったが、著者はミツバチを非常によく観察しており、ミツバチの生態に対する深遠な考察がすばらしく、大変な説得力を持つ。何度も言うが「マニアが、自分の好きなことについて語った内容」というのは、読んでいて(聞いていて)非常に楽しく面白いものである。本書もそういう要素を持つ。
 ミツバチの生態について書かれているのは前半3分の1くらいで、その後はオオスズメバチとの関わり、人間との関わり(養蜂に関する問題)などに話が移る。自然の中の存在としてのミツバチに焦点を当てながら、人間、ミツバチが相互に依存しながら、自然の中で共生する環境が重要であることを強調する。
 最後の3分の1は、ニホンミツバチ復活プロジェクトについてである。人間による自然環境の破壊によって、ニホンミツバチが絶滅してしまった長崎県の五島地方にニホンミツバチを復活させるという活動について述べている。ニホンミツバチを復活させるには、環境の復興が条件であり、同時に環境の復興にもミツバチが大きな役割を果たすことを主張する。このあたり、内容自体は面白いが、記述が前後にぶれ非常に読みづらく、何度も前のページに戻る必要があった。
 しかし全体としては、簡潔な文章が連なり、非常に読みやすい。内容の奥深さも考えると、ミツバチ関連書籍の決定版と言うことができるんじゃないだろうか。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ミツバチの会議(本)』
竹林軒出張所『ハチはなぜ大量死したのか(本)』
竹林軒出張所『銀座ミツバチ物語(本)』
竹林軒出張所『スズメバチの恐るべき生態(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2009-09-09 09:50 |
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