それぞれのテーブル
(アルバム
『それぞれのテーブル』に収録)
歌:ちあきなおみ
作詞:J.C.ジョホード/A.タバルト/J.ジョルジェティ
訳詞:真咲美枝
作曲:A.ドナード/M.クリスチーヌ
店のドアが開き
入って来たひとは
あなただった
ふたりでこの店に
よく来た頃がよみがえる
そしらぬふりして
タバコをつけても
もうだめなの
今は振り返り
笑う勇気さえなくしたの
あなたの腕にいる
若いあの娘はしあわせそうね
あなたもやさしく ほほえんでいる
たのしそうよ
昔はすべてをわかちあった私達
今はそれぞれの別のテーブルに座っている
バツの悪そうな
あなたの笑顔は
昔のままね
相も変わらず
手品のように
魅力的よ
あたしはそれには
もう 慣れてると
思っていたのに
同じテーブルの友達の
声も聞こえない
恋が終わったとき
ひとはそれぞれの別のテーブルに
いるのね
ちあきなおみは歌がうまい。歌謡曲は言うに及ばず、シャンソン、ファド、ポップス、ニューミュージック、演歌となんでもこなす。
ちあきなおみが歌った歌を聴いてつまらないと思ったら、それはその歌自体がつまらないのだと言っても過言ではない。
ちあきなおみの歌を聴くと、「歌がうまい」ということがどういうことかよくわかる。声が通るとか良い声が出るとか、音をちゃんと拾えるとか、もちろんそういう要素も当たり前にあるのだろうが、要は表現力である。歌詞をいかにして聞き手に届けるか、歌詞のドラマをいかに聞き手に感じさせるかである。
ちあきなおみの「それぞれのテーブル」を聴くと、ドラマが目の前に展開される。主人公の心の機微が伝わってくる。歌い手には、映画やドラマにおける役者と同様の役割があることも自然と理解できる。そう考えると、ちあきなおみが役者として良い味を出していることも合点がいく。ガッテンガッテン!
引退して10年以上になるが、キャリアを終えたことが返す返すも残念である。もっといろいろな種類の音楽をカバーしてほしい。安っぽいカバーアルバムばかりがはびこる昨今、つくづくそう思うのである。
参考:
竹林軒出張所『ちあきなおみ ふたたび』
竹林軒出張所『「ちあきなおみ ふたたび」ふたたび』